68人が本棚に入れています
本棚に追加
「穢らわしい人の肉と混ざり合い、獣の体内を蠢いていると、獣の胎内に生まれゆく命を見つけたのだ。それを喰らい、我は新たな命を得た。だが…混ざり合った肉塊はあろう事か穢らわしい人の形となり、我を抑え、この世に生を受けた。しぶといものだな、人とは」
何、何の話をしているの…
「そしてソレをお前が見つけた。この体を産み落とした飛竜を追い払ってな」
…あの迅竜は子供を守っていたの…?
姿は違えど自らが産んだ子供を。
私はそれを奪った形になる?だから…あの迅竜の向けてきた敵意、ナルへの行動…ナルの涙…。
私の中で全てが一本に繋がる。
なんて受け入れ難い非常識。非現実。だが…目の前にそれは…在る。
「諦めていたのだが。人の脆弱な体では我が使う事は出来ぬと。しかし、我と飛竜と人。3つは奇跡的な形で拮抗し、強靱な器となった。ソレがお前に鍛えられ、完成し、自ら親を殺した事で人の精神が弱り、我に喰らわれた…という事だ」
押さえ込む手に力が入る。
「…どうしてそんなにベラベラと説明してくれたのかしら?キミ、おしゃべり好きだったんだね」
ヤツの口元が笑みを零し、更に手に力を入れてくる。
「一度我を殺した事への敬意を払っているのだよ…」
「あら、そう…じゃあもう一つだけ。ナルはどうしたの」
「あの紛い物か。我が喰らい尽くした。もう存在しない」
私は目を閉じ、息を吐く。
「そう、それじゃキミの目から流れてるそれは何?」
ヤツの頬を温い水滴が伝う。
「なん…だ…これは…?」
ヤツは戸惑い、手の力が緩む。
「キミの片手が大事そうに握ってるモノは何…?!!」
「…何故こんなものを……」
更に力が緩んだ瞬間、とっさに手を引き抜いて、背中の夜天連刃を抜き、胴体を斬りつける!
硬化の解けた胴に刃が通り、ヤツが仰け反る。その隙にすり抜け、後転して飛び退く。
「悪いけど、コレはキミのじゃないから、後でナルに返しとくね、寄生虫さん?」
わざとらしい笑顔を向け、ヤツが握り込んでいたマスコットをチラチラ見せる。
「貴様ァ…」
突拍子もない話だった。正しく理解など出来てない。しかし…
一つわかった。それで十分。
マスコットに目をやる。
涙とこれ…。ナルは喰われてない。
タチの悪い寄生虫に棲みつかれて操られているだけだ。
なら…あの寄生虫をくだしてやればいいんじゃない…!
最初のコメントを投稿しよう!