その8 ヤクソク

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「穢らわしい人の肉と混ざり合い、獣の体内を蠢いていると、獣の胎内に生まれゆく命を見つけたのだ。それを喰らい、我は新たな命を得た。だが…混ざり合った肉塊はあろう事か穢らわしい人の形となり、我を抑え、この世に生を受けた。しぶといものだな、人とは」 何、何の話をしているの… 「そしてソレをお前が見つけた。この体を産み落とした飛竜を追い払ってな」 …あの迅竜は子供を守っていたの…? 姿は違えど自らが産んだ子供を。 私はそれを奪った形になる?だから…あの迅竜の向けてきた敵意、ナルへの行動…ナルの涙…。 私の中で全てが一本に繋がる。 なんて受け入れ難い非常識。非現実。だが…目の前にそれは…在る。 「諦めていたのだが。人の脆弱な体では我が使う事は出来ぬと。しかし、我と飛竜と人。3つは奇跡的な形で拮抗し、強靱な器となった。ソレがお前に鍛えられ、完成し、自ら親を殺した事で人の精神が弱り、我に喰らわれた…という事だ」 押さえ込む手に力が入る。 「…どうしてそんなにベラベラと説明してくれたのかしら?キミ、おしゃべり好きだったんだね」 ヤツの口元が笑みを零し、更に手に力を入れてくる。 「一度我を殺した事への敬意を払っているのだよ…」 「あら、そう…じゃあもう一つだけ。ナルはどうしたの」 「あの紛い物か。我が喰らい尽くした。もう存在しない」 私は目を閉じ、息を吐く。 「そう、それじゃキミの目から流れてるそれは何?」 ヤツの頬を温い水滴が伝う。 「なん…だ…これは…?」 ヤツは戸惑い、手の力が緩む。 「キミの片手が大事そうに握ってるモノは何…?!!」 「…何故こんなものを……」 更に力が緩んだ瞬間、とっさに手を引き抜いて、背中の夜天連刃を抜き、胴体を斬りつける! 硬化の解けた胴に刃が通り、ヤツが仰け反る。その隙にすり抜け、後転して飛び退く。 「悪いけど、コレはキミのじゃないから、後でナルに返しとくね、寄生虫さん?」 わざとらしい笑顔を向け、ヤツが握り込んでいたマスコットをチラチラ見せる。 「貴様ァ…」 突拍子もない話だった。正しく理解など出来てない。しかし… 一つわかった。それで十分。 マスコットに目をやる。 涙とこれ…。ナルは喰われてない。 タチの悪い寄生虫に棲みつかれて操られているだけだ。 なら…あの寄生虫をくだしてやればいいんじゃない…!
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