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「とりあえずそれでいいよ。キミにはあの子に会わせてくれて感謝してるから。後はアーリィに任すね」
私は踵を返し、ナルの方へ歩く。
「ふ、ふふ…いい、実にいい悔し紛れの台詞…いや滑稽、滑稽。私の勝ちですよ…」
汚く喋る男に、私はキョトンとした感じで答える。
「ね、キミ。勝ち誇ってるとこ悪いんだけどさ…。私はね、ナルの願いを叶えてあげられた。だからね、私の勝ち。勝ち負けなんて関係ないけど、敢えて言うならね」
男はまた汚い笑い声をあげている。
私はナルの横に立ち、語りかける。
「ナル、よくがんばったね。だから…そろそろ家に帰ってご飯、食べよ?」
ピクリとナルの耳が動く。気のせいかネコミミも動いた気がする。
「う…ん…ごは…ん?あれ…」
男が絶句し、力なく座り込む。アーリィは微笑している。
「わたし…いきてるの…?どうして…」
私はナルの頭にポンと手をのせてやる。
「ナルのお願い、叶えるって言ったでしょ?これからも私とずっと一緒にいる事。違ったかな?」
…ナルが泣きじゃくって抱きついてくる。…暖かい。鼻水ついてんですけどね。
「…アーリィ、キミ気づいてたでしょ?性格悪いなぁ。」
小さく笑いながらアーリィが答える。
「くく…お前も十分性格悪いぞ。うらまれるのもうなずけるな。」
顔を見合わせ、2人で笑う。
いつの間にか木々の隙間から洩れる光は太陽のものになっており、3人の少女を優しく包み込んでいた――。
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