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そしてもう一方の〝蒼〟は、光の加減のせいかその表情は窺い知れないが、少女である事が解る。
清涼感のある青をモチーフにしたロングジャケットと、揃いと思われる足首が隠れるほどのロングスカート。腰の後ろに結わえつけられているのは赤と白に彩られたストライプのリボン。
夜も更け込んだこんな時間にこんな姿で外にいる少女も異常といえば異常だが、それに拍車をかけているのが右手に握った金属製の長柄の棒だ。
杖、なのだろう。1m強の長さの柄部分から繋る先端部分は四枚の流線を描き収束し、それに守られる様に緑青色の八面体の宝石が中央に煌めいていた。
少女はその杖の先を、ゆっくりと魔獣へと向ける。
《Katharsis mode.》
杖から放たれたのは、凜、と透き通る女性の声。
しかし、それを聞き終わる事なく魔獣は後ろに跳ねた。
背後は海だ。
逃げるにしても身動きの取りにくい水中へ向かうのは自殺行為に近い。
水面が飛沫を上げる。
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