14人が本棚に入れています
本棚に追加
そう思われた一瞬、魔獣に変化が起きた。
ずるり、と生々しい音と共に背中から黒い羽──どちらかと言うとコウモリなどを連想させる翼膜だが──それが忽然と生まれ出る。
「まずい! ヤツは空に!!」
また新しい声が聞こえたが、それを掻き消す様に黒い翼膜が勢いよく水面を打つ。
弾け飛ぶ海面。
それに飛び乗る様に、黒き魔獣は夜の闇に熔けていく。
「──追います!」
《Aerial Drive.》
蒼き少女の握る杖が再び声を紡いだ瞬間、少女の身体がふわりと宙に舞い、そのまわりにはキラキラと輝く蒼い粒子が吹き上がる。
「掴まって!!」
振り向く少女に、呼ばれた青色のスカーフを首に巻いた黒いふさふさした毛玉──まぁ、はっきり言ってしまえば、黒い“ひよこ”なのだが。
そのひよこが羽をパタパタと必死に動かし、少女の頭頂部にぽふりと着地する。
「よ……よし。いつでもいけるぞ!」
そんなひよこに小さく笑いかけ、少女もまた夜の闇を切り裂き飛び出した。
最初のコメントを投稿しよう!