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空を翔けるは闇に溶け込む黒い残影。
それを追うは蒼い彗星。
そのスピードはほぼ互角。
地上から天空へと還る二条の星は、距離を詰める事なく高く高く上っていく。
「くそっ、差が縮まらない! このままじゃ振り切られる!!」
ひよこの焦った声。
しかし少女は涼やかに、しかしどこまでもやわらかい口調で答える。
「なら、撃ち落としましょう」
「この距離を?! このスピードでか?!」
先程までとは違った意味での焦りの声。
しかしそれも数瞬の沈黙の後、信頼の声へと変わる。
「よし、任せた!」
「はい……!」
風を裂き、夜を裂き続ける少女はその速度を落とす事なく、真っ直ぐ前を往く魔獣へと杖を向けた。
《Concentrate sensitive.》
少女の額から頬の上にかけ、青いバイザーが据えられる。
視界の拡大。
先程はシルエット程度でしか追えなかった魔獣の姿が、今は手に取るほど鮮明に映る。
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