1776人が本棚に入れています
本棚に追加
結局テストはできなくて。
それでも何とか赤点を免れた。
俺ってなかなかやるな。
なんて、自分で自分を褒めてみた。
「だりぃな~」
授業をサボって屋上で昼寝中の俺。
寒くて昼寝どころじゃないのが現実だけど、吐いた息の白さに冬を感じずにはいられない。
屋上から見える景色はけっこう気に入っていて、高い建物が何もない自然に囲まれたこの田舎も、嫌いじゃない。
冷たい風が草木を揺らす。
「さみぃな」
独り言を呟き、あまりの寒さに屋上を去ろうとドアのノブに手を掛けると、ノブが勢いよく回り、見慣れた顔が目の前に現れた。
「見つけたー」
俺の顔を見るなりそう言って顔の筋肉を緩めたのは早苗だ。
短いスカートが、強い風に揺れる。
女は足を出していて冬は寒くて大変だな。なんてどうでもいいことを言いそうになってやめた。
そんなこと言ったら、俺、オヤジみたいだもんな。
最初のコメントを投稿しよう!