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とにかく、無事に有休をもらうことができた。
家でできる仕事のオマケ付きで。
「会いたいヤツはいないか?」
最後の別れに……なんてわけじゃないけど。
こいつが会った人間は、ユキしか知らないけど。
「なぁ。会いたいって言ってくれよ」
そしたら、俺が連れて行ってやる。
ネコが俺の目をじっと見る。
『素直じゃないな』
あぁ。
それはオヤジ譲りだからな。
「今更……何もなしに行けるかよ」
いつまでも忘れられない、あいつの……傷付いた姿。
普通なら、楽しかった記憶とか、笑いあった事とかさ。それが残ると思ってた。
俺を拒む背中。
あれが焼き付いて離れない。
時間が経つにつれ、より鮮明になる。ユキのあの背中。
『あの娘の何を見ていたんだ』
ネコの目が語る。
あいつを見てきたこいつが言うんだから、俺には突き刺さるものはあるよ。
「でも、俺は傷付けた」
あいつの背中は、俺を拒否していたんだ。裏切られた気持ちは、普通なら消えないものだろ?
『普通なら……だな。あの娘は普通だったかな』
はは……。
そうだな。あいつは変わり者だ。
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