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難しい表情で宗吾が聞いた。
「あの母親、なんか質問に答えたか?」
被害者男性の家の前で川野、矢島、を合わせた4人で話しているのだ。
川野が渋い顔で首を振る。
「ずっと項垂れて、主人はいい人でした…それだけです。今日、家を何時に出たかさえ教えてくれませんでした…。」
「そうか…。」
「被害者の会社の方は…」
川野が宗吾に聞いた。
被害者男性の会社には別の人間が行ってるが、まだ報告が来ない。
「まだだ…。」
眉間にシワを寄せて答える。
あ、と言って川野はシャツのカフスボタンを外したり、着けたりと遊んでいる紀香に向き直った。
「なんですか?」
と無機質に紀香は言った。
「あの奥さん見て、なんか思わなかったか?」
川野の問いに紀香はピタッと手の動きを止め、右上を見て、
「う、ん…?」
と考えた後、
「特にないです。」
と再び無機質に答えた。
「そうか。」
と川野は残念そうに肩を落として、その場はそれで終わりになった。
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