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俺はそれ以降なにも言わなかった。
人通りのない裏路地に、二人分の足音だけがただ響く。
「……ねえ」
くい、と上着の裾を引っ張られた。
俺は振り返らずになんだと聞いた。
「いつも、こうなの?」
「んー? なにが?」
少女の指すものがいまいちよくわからず、振り返って聞き直す。
「捨てられていれば、猫でも犬でも……フラミンゴでも拾っちゃうの?」
そういうことか。
自分をフラミンゴと表現したことに少しのおかしさを感じた。
「ああ……いや、いつもは拾わない。フラミンゴは特例」
「ふぅん……」
「でもまあ犬猫でも放ってはおけないね。次の日、気になって見に来たりする」
「そう……」
少女はそれきりなにも言わなかった。
いつの間にか上着に添えられていた手は離され、さっきまでの微妙な距離を保っていた。
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