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家につく頃には日がとっぷりと暮れ、中はすっかり暗くなっていた。
フラミンゴは買い物袋を台所におくと、何もいわずにパタパタと先ほど座っていた位置に戻った。
(なに考えてるんだろうな)
膝に顔を埋めたフラミンゴを一瞥し、台所に入る。
買い物袋からネギを取り出し、軽快にザクザクときっていく。
夕飯はすぐできる。
それまでにフラミンゴの考えがまとまるといいな、などと考えながら、鍋になみなみと水を入れていった。
すす汚れた鍋に俺の顔が映る。
ふと、それを見て俺は昔のことを思い出した。
二人分の料理を作るなんていつぶりだろうか。
(紗希……)
あいつがいなくなって、一年近くもたつのか。
そうか、それで、俺は――……
「ねえ、ガス臭い」
フラミンゴの声で一気に現実に引き戻された。
コンロのスイッチを押しっぱなしにしていたようだ。
「あ、わりい、ありがとう」
慌てて手を離し、窓を開けた。
「ガス心中なんて洒落てると思ったのに」
「洒落にならねえよ、フラミンゴ」
そんな冗談を言いながら、ガス臭さが抜けるのを待った。
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