段ボール少女と青年

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雨ではない。 晴れでもない。 微妙な天気の中、妙に湿った空気をまといながら、俺は猫背気味に歩く。 遊歩道の人通りはまばらで、誰も俺に目を向ける人はいない。 時折雨の降り出しそうな空を見て、洗濯物の心配をしながら俺は淡々と歩みを進める。 家に帰るために。 普段は気にしないのだが、なんだか今日は駅から家までの距離を煩わしく感じた。 後少しで家、と言うところで不意にジーンズのポケットにはいっている携帯が震えた。 「……あ」 メールをみて、今日はサークルの新人歓迎会だったことを思い出した。 幹事の女の子はご立腹のようで、メールの文面も普段のかわいらしい絵文字はなく、『渡部、いまどこにいるの?』と実に簡素なものだった。 悪い、遅れる、と送信し今きた道を戻ろうと踵を返す。 ――……駅まで戻ると時間がかかるな……。 車通りの多いところでタクシーを捕まえようと思ったが、所持金の関係からやっぱり駅まで戻ることにした。
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