10人が本棚に入れています
本棚に追加
――……畳んだ段ボールを脇に抱えた少女が、ぺたぺたと後ろをついてくる。
俺は携帯電話を片手にその音を聞いていた。
打ち上げは断ることにした。
電話口の神経質な女の子は怒り狂っていて、きっと次は呼んでもらえないだろうな、などと思っていた。
まあ、それよりも重大な問題が目の前にあるわけだから、なりふり構ってなど居られない。
素足のまま砂利を歩く少女。
俺の歩調にあわせようと一生懸命にぺたぺたと歩く。
少女は文字通り身一つだった。
荷物らしい荷物も持たず、聞けば昨日からあの場所で誰かが来るのを待っていたという。
春半ばとはいえ、夜は冷えるだろうに。
「……なあ、」
少女に問いかけようとして俺は止めた。
いや、よそう。
本当ならこのまま少女のうちに帰してやるのが一番いい。
だが少女は自分のことをけして語りはしないだろう。
小さくつぶやいただけつもりだったのだが、俺の声が耳に届いたらしい、少女はこちらを少し見たようだ。
小さな視線を背中に感じた。
最初のコメントを投稿しよう!