2#この手には何も残らず

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 今日も美幸には朝から不幸がつきまとっている。  早くこいつをなんとかしないとと思いつつ、美幸を守るのは俺しかいないと使命感に燃える。 「おひゃよー、あゆくん」  寝起きで寝ぼけている美幸を制服に着替させ、俺は二人で慎重に部屋を出ようとした。  が、出ようとした一歩をその場で止める。 「みゆ、とまれ」 「んー?」  振り返りながら返事をする美幸の腕を引いて、俺は部屋に引き戻した。  ……つられて倒れたのは、俺がまだまだ修行不足なせいだ。 「だいじょうぶー、あゆくんー」  俺の上に乗ったまま少し心配そうに眉を顰める美幸の頭を、そっと撫でる。 「大丈夫だから、ちょっとどいて」 「うん」  俺の胸に両手を置いて移動するのはわざとか、美幸。  そんなわけもないと知っているので、俺は軽く呻くだけにとどめて起き上がり、ドアを開けて向こう側から大きめのお盆を引き寄せた。  どうやら、両親は朝から急用で出かけたらしいと、一緒に置いてあるメモから読み取る。 「みゆ、朝飯」 「わ、トーストだー」  好物を見て、嬉しそうに手を打ち鳴らせる美幸の前にお盆を置いて、俺は美幸の隣りに座る。  盆の上には湯気の立つコーヒーとホットミルク、それから分厚い焼きたてのトーストが二切れと、スクランブルエッグが二つ。  それから、溶けかけたアイスが二つ。  俺の家族が美幸を引き取った時から美幸の不幸体質を全面的に理解して、それはそれと割りきって付き合っている。  だから、朝からキッチンに辿り着く前に何かあったら大変だろうと置いておいてくれたのだろうが。  普段からそうしないのは美幸の無事を確認したいからと知っているだけに、俺も気にしない。 「トーストとアイスは別にしておくべきじゃないか?」 「いいからたべよーあゆくん。  いただきまー」  美幸がホットミルクに口をつけている間に、俺は美幸の分のトーストにマーガリンを塗り、スクランブルエッグを挟む。 「みゆ、口開けろ」 「あー」  それを美幸の口に放り込んでから、俺は自分の分のトーストに同じようにスクランブルエッグをはさみ、一口で口に入れて、コーヒーで流し込む。
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