守る人、静める人

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新医師臨床研修制度(マッピング制度)が始まり、研修医は研修先が自由に選べるようになった。 以前も希望すれば研修病院を大学病院以外に出来ない事はないが、慣習として母校の大学病院で臨床研修するのが普通だった。 マッピング制度で自由を得た研修医は奴隷のように低賃金で働かされる癖に、手術症例が少ない大学病院を研修先には選ばず、賃金も高く症例も多い総合病院に研修医は流れた。(新医師臨床研修制度が施行され、研修医の当直アルバイトが禁止され大学病院も総合病院も月給30万円研修医に給料を払わなくてはならなくなった。) そんな中母校群帝大学医学部附属病院を研修病院に選んだ研修医が居た。 麻海千華。 外科医を目指して医学部に入った生粋の体育会系。 外科を目指すなら手術症例の少ない大学より、市中病院の方がいいはずである。 しかし、麻海を大学に残ろうと思わせた原因は救急部の教授の講義だった。 教育教授の講義は実にユーモアに富んでおり、論理的分かりやすい。 臨床教授の講義は実例をベースに考えさせれる医療倫理や救急医の哲学の話も魅了した。 地元の海都大学医学部を受けたが落ちていて、一年浪人した。 安全策として地元より偏差値が低い群馬県の群帝大学医学部を受け、合格した。 最初の研修先は麻酔科である。 更衣室で白衣を着て、職員証を首に掛ける。 他の研修医二人と一緒に麻酔科蘇生科医局のある東棟に行く。 麻酔科蘇生科医局(生体統御麻酔科学教室)と医局のドアにはある。 ノックして入る。
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