壱夢 「始まりしとき」

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今は春。 浮き出た道を挟んで桜の木が咲き並び、桜同士が譲り合って咲いていた。 その道を歩くと桜のトンネルをくぐっているかのように思える。 桜の花びらは踊り始め、固々しい灰色の道をゆっくりと桃色の絨毯に変えていく。 その右手側には鮎が羽跳び、水しぶきを飛ばして川の中に戻っていく。 川のせせらぎは心癒やす心地良い音色だ。 左手側には静かな街並みが広がっている。 まだ朝が早いのか生活音が聞こえない。 空気は若干ほのぼのしていて僕にとってこの温度はほっと安堵する気持ちにさせる。 入学式にはもってこいの日だった。 のはずなのに………。
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