零夢 「prologue」

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鈍い痛みが血管の中を走り、止めどなく血液が傷口から溢れ出ていた。 その様子に目を奪われてしまった少年の隙をついて、引っかかっていた剣を強引に引き抜き、続けざまに少年の剣を払った。 勢い余って相手の剣が部屋の外に飛ぶ。 思わず目で追っていた少年の喉仏に剣先を突きつける。 「動くな、両手を上げろ」 一瞬の出来事に驚いた様子であったがそれは瞬き程の時間でしかなく、直ぐに無表情になった。 少年は動かなかった、が両手を上げようとはしなかった。 「手をあげろ。子供とて容赦しない」 剣先を動かして催促させる。 「どうせ殺すんだろ?」 やや無表情で少年は言った。 その言動に多少の驚きはあったが一応騎士の礼儀としてすぐさま返答した。 「そうだろうな」 自国では、容疑者の弁論は認められているが国に逆らった場合、大抵が家族共々死刑として処理される。 良くて首謀者は死刑、家族は終身刑となる。 万が一、生きて出てこれようとも差別され罵倒され迫害される。 それは正に生き地獄そのものだ。
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