導入

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そしてこの小説はそういったジャンルの一つである。 タイトルから本題を導くと、読者はもちろん分かっているだろうが、最近起こったある事件についての、著者の感想を交えた叙事文である。当然この叙事という表現は将来に残したいという意味でなく、単に平たい文体で進めるという宣言だ。 ある意味で達観した目線を用い今回の事件を表すとしたなら、この永く諸行無常が続く幻想郷において何ということもない出来事であるのだが、差し置いて主観的な見方をすればやはり重大事件、人生に置いての一事件として捉えられ、そこにある種の好奇心を抱いた著者はこの件を……―――。 「だああああああっっ!!」 「はわっ、文さん、どうなさいましたか?」 妖怪の山のとあるオフィス。射命丸文は先程まで握りしめていた筆を放り投げ、両手を上げて全身の力を抜き、最終的には机へ伏した。その傍らでは部下の犬走椛が書類の整理に走り回りながら、心配そうな目で働きづくめの上司を見つめている。 「あやややや、やっぱりこう、これほど堅苦しい表現は私の性に合わないですね」 「そんな、『ルポルタージュってものに挑戦してみるっ!』て昨晩まで乗り気だったじゃないですか。もう諦めちゃうんですか?」 「私は幻想郷一の速さをもつ記者と呼ばれているのですよ?そんな私がこの短い文に一晩も費やしたんだから、私には向いていないの」 「はぁ……」 「そういうわけで、いつもどおり新聞として出しますよ!見出しはそうね……。 【八雲紫、外の世界からまたもや誘拐!彼女に道徳は?外来人の今後に迫る】! これで決まりですね!ほら椛、そうなれば早く手伝って、締切は近いわよ!」 「は、はい~」
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