・第一話・

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「……おお」  ちょっと感動。  やっと小さな冒険の一歩目を踏み出した、そんな感じだ。  中に入る前に、バックパックから懐中電灯を取り出す。  さすがに校舎内は明かり無しでは進めないだろう。  取り出して、バックパックを背負い直して、それからようやく室内へと踏み込んだ。 「うおっ」  照らした足下から埃が舞い上がる。しかもすごい量だ。  くしゃみでもしようものな「へくしゅんっ!!」  やべえ。言ったそばから出ちゃったよ。  埃はくしゃみのせいで余計に勢いよく舞い上がり、俺に襲いかかってきた。  口と鼻を押さえながら逃げるようにして出口を目指す。  ここはもうダメだ。見限ろう。  なるべく静かに速くという難しい歩法を試みながら、廊下へと飛び出した。  急いで扉を閉める。  落ち着いて深呼吸をしたら、またむせた。マスクを持ってくれば良かったと後悔。  まあいい。まあいい。  とにもかくにも侵入には成功したのだ。後は時間の許す限り(明日は日曜日で学校は休み。ただし姉さんに朝食を作らなければならない……)探し回ろう。  電灯を持ち直し、廊下を照らす。 「……」  一瞬で昔見たホラーを思い出してしまった。あれは確か廃校舎が舞台だ。
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