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「ありがとうございます」
「え?」
「はじめて否定されませんでした。こんなことを言っちゃう私を、冬貴さんは認めてくれました。だからありがとうです。それと――」
一拍置いて、
「私と友達になってくれませんか?」
*
「も、もちろんです」
……、思い出に答えてしまった。今のは思いっきり独り言だったぞ。
喫茶店で一人コーヒーを飲みながら独り言をつぶやく男。
うわー、友達になりたくねえ。恥ずかしくて死ねるよお。
「何がもちろんなんです?」
「――っ!?」
声がして、テーブルに押し付けるように伏せていた顔を上げると、そこには美少女がいた。
……。
至福姿、いや違う、私服姿の久慈白真綿だった。
動けない。彼女が眩しすぎてヤバい。ヤバいよ。助けて母さん、俺いま幸せです。
「ど、どうしたんです!? 何だか変ですよ?」
自然な流れで対面の椅子に座る真綿。心配そうに顔をゆがめて俺を見る。
「それにそんなに見られたら恥ずかしいです。穴が開いてしまいそうです」
穴が開いたら大変だ、とは思わずにすぐに目を逸らした。残りわずかになってしまったコーヒーを一気に飲み干す。
「ご、ごめんその、考えごとしてて驚いた」
「そうなんですか。私こそすいません! 声を掛ける前に、今から声掛けますよって言うべきでしたね」
「え?」
「え?」
ぼんっ、と途端に真綿は顔を真っ赤にして、
「変なことを言ってしまいました」
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