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「――! ……、………!!」
手に持った懐中電灯を振り回して合図を送ってきたのは、朝田央佳。相変わらず声が出ていない。
「おう、悪い悪い。……怖くないか? 大丈夫か?」
朝田は顔を真っ赤にしながら激しく頷いた。そうやって合図を送ってきてくれるのはいいんだが、如何せん目のやり場に困る。
こいつは自分がどんなモノを持ってるか理解しているのだろうか……。
「お兄ちゃん!!」
朝田の隣に小さい影。それがびっくりするくらいの速さでこちらに突進してきた。
「――おう!?」
その小さい影をしゃがんで受け止める。全くためらいのない突進は痛烈で、イノシシみたいだった。
「お兄ちゃん、えへへ。ゆず心配してたあ」
「そうか、ごめんな。柚木は怖くなかったか?」
「お兄ちゃんがいるからこわくないっ」
小さい影――倉科柚木は顔を綻ばせ、縋るみたいにすり寄ってくる。
「……ロリコンにブラコンが」
ほほえましく戯れる俺たちの上から低い声が降ってきた。そして同時に引き剥がされる俺。声の主はつかさだった。
「あああ、なにするんだあ! お兄ちゃんを返せっ」
「何が『お兄ちゃん』よ。いとこでしょ、関係は」
「ちがうもん! お兄ちゃんはゆずのお兄ちゃんだもん! 貧乳は貧乳らしくその辺でさびしくビンボーしてろっ」
「んがっ!?」
予想外の返しだったのかつかさは胸を両手で押さえながらふらついた。
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