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「今日はイケそうな気がします! ね、冬貴さん?」
満面の笑みで言われれば、それはもう頷くしかないというものである。
「よろしいです! では行きましょう。私についてきて下さいね? 気付いたら私一人になってるなんてイヤですからね」
だからシャレにならねえっての。
選択肢など存在せずに、ずんずん突き進む真綿についていく。
つかさはというと、俺の斜め後ろを歩いていた。ギリギリ視界に入るから、いきなりいなくなるということはないだろう。
「怖いの? さっきから静かだけど」
「え!?」
肩を震わせ、盛大にびくついたつかさ。少しでも緊張を和らげてやろうと思ったのだが、逆効果だったらしい。
「違うわよ。ちょっと思ったより寒かっただけ」
そう言うつかさはシャツに薄手のカーディガンを羽織っている。これまた驚くほど可愛い。
真綿の動きやすさを重視した軽装とはえらい違いだ。
「まさか霊的な寒さ?」
「アンタねえ……。っていうかさ、」
そう言って、つかさは二歩分くらいある距離を縮めてきた。肩と肩がふれあい、ほとんど密着状態だ。
そうして内緒話をするときみたいに声をひそめる。
「アンタはほんとに信じてるわけ? 幽霊」
……実際内緒話だった。
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