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「けっこう雰囲気あるのね。これならいつ出てもおかしくないって感じがするけど」
と、つかさ。
「そのはずなんですけどねえ。私は一度も出逢ったことがありません。悔しいです」
握り拳を作って悔しがる真綿。
「ここには何回くらい来てるんだ?」
「はい。えっとですね、」
真綿は背負っていたカバンから一冊のノートを取り出した。電灯で照らしながらパラパラとページをめくっていく。
「それは?」
つかさが一歩近づいて聞いた。
「交流記録です!」
「こ、交流……?」
「はい! その日の活動内容や気付いたことをメモしたり、撮影した写真をファイリングしたり――そして幽霊さんとどんな交流をしたのかを記録するんです」
「そうなの……真綿ってマメなのね」
聞いたことを後悔したのか、つかさはこめかみをヒクつかせていた。その気持ちは分かるぞ。
「まああまり意味はないんですけどね。今まで交流を書けたことはありませんし」
真綿は俯きながらノートを見つめる。照らされたページには、その日何をしたのかというような真綿の行動しか書かれていなかった。
「真綿……」
何か声を掛けようとしても、気の利いた一言が思い浮かばない。
真綿の肩に伸ばそうとした手を引っ込めて、ポケットに入れた。落ち着く場所が見つからなかったのだ。
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