・第三話・

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 音楽室に行くには構造上(途中鍵のかかった場所を通ったりするため)、一旦一階へと下りて迂回しなければならない。  ぶつぶつ文句を言うつかさを引き連れて、音楽室を目指す一行。  そんな中、異変は唐突に起きた。  俺とつかさが横に並び、真綿がそれを後ろから撮影する陣形。  真綿いわく、某呪いのビデオシリーズやいわゆる投稿映像モノみたいで雰囲気が出るんだとか。  確かにこんな風に撮影していて、この世のものではない何かが写ってしまうパターンは定番である。  改めて見直したときに何も写り込んでないことを祈るしかない(え)。  とにかく、とにかくだ。  真綿は二人の後ろにいた。それっぽくテキトーな雑談に興じる俺らを撮っていたのだ。  ふと後ろを向いてみれば、そこに真綿の姿はなかった。  突然に忽然と姿をくらましてしまったのだ。  * 「ちょっ、ちょっとどういうことよ! なんで居ないの!? さっきまでそこにいたじゃない!」 「知らねえよ! 全然気付かなかった。本当に気配も何もなく――ああもう!」  携帯を取り出して、真綿に掛ける。通話ボタンを押すと、呼び出し音が聞こえてきた。  よかった、通じる。そんな当たり前のことに安堵してしまう。  
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