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今は使われていない廃校舎と言っても、忍び込むという事実は変わらない。
誰に這入る許可をとっていいのかも分からず、結局こっそりいくことにしたのだ。
目の前には件の廃校舎。辺りには街灯など無く、人ももちろんいない。
一応もう一度周囲に人がいないことを確認した。
俺の性根の部分の、罪悪感みたいなものをねじ伏せてから、緑色のフェンスに足をかける。
「――っ!?」
ガシャンガシャンと物凄い音が鳴って、心臓が止まりそうになった。
誰もいない誰もいない誰もいない。
何度も呟きながらよじ登る。頂上を越えて、反対側――校舎側に向かって跳ねた。高さが二メートルくらいしかないので、この辺は問題ない。
「やべぇ、俺いま悪いことしてるよ」
ねじ伏せたはずの罪悪感がむくむく湧き上がる。
いままで何かと目立つ姉さんの隣で、俺はなるべく目立たないように生きてきた。
両親の言うこと、姉さんの言うこと、先生の言うこと――何の疑問もなく彼らの言いつけを守ってきた。
それが俺の生き方だと思っていたし……それ以外に生き方があるなど考えもしなかった。
残念なことに、中学二年くらいまでは本気でそんなことを思っていたのだ。
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