・第一話・

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 今は使われていない廃校舎と言っても、忍び込むという事実は変わらない。  誰に這入る許可をとっていいのかも分からず、結局こっそりいくことにしたのだ。  目の前には件の廃校舎。辺りには街灯など無く、人ももちろんいない。  一応もう一度周囲に人がいないことを確認した。  俺の性根の部分の、罪悪感みたいなものをねじ伏せてから、緑色のフェンスに足をかける。 「――っ!?」  ガシャンガシャンと物凄い音が鳴って、心臓が止まりそうになった。  誰もいない誰もいない誰もいない。  何度も呟きながらよじ登る。頂上を越えて、反対側――校舎側に向かって跳ねた。高さが二メートルくらいしかないので、この辺は問題ない。 「やべぇ、俺いま悪いことしてるよ」  ねじ伏せたはずの罪悪感がむくむく湧き上がる。  いままで何かと目立つ姉さんの隣で、俺はなるべく目立たないように生きてきた。  両親の言うこと、姉さんの言うこと、先生の言うこと――何の疑問もなく彼らの言いつけを守ってきた。  それが俺の生き方だと思っていたし……それ以外に生き方があるなど考えもしなかった。  残念なことに、中学二年くらいまでは本気でそんなことを思っていたのだ。
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