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大塚昭彦にとって、その日は特別な日では無いはずだった。
ただ、友人のそのまた友人が、個人的なパーティーを開くから、数あわせで出席しないか? と誘われただけの、普段とは少しだけ違う、しかし、彼の眼前にめくるめく様な世界が展開されるわけでもない、退屈きわまりない集まりでしかなかった。
場所はホテルの会場というとても豪華な物だった。そうでありながら、女性からはほとんど会費を取っていないため、男性から徴収した会費が、この場所の貸し切り費用に当てられているのだが、昭彦はそんなことは知らない。ただ、福沢諭吉一枚と別れを告げる羽目になった事だけが、彼の知る事実だった。
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