暗闇の中に浮かぶ目印の問題

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 次の日、松原は再び娘夫婦の家を訪ねた。議論の続きが出来ることを期待してだったが、例えその話をすることが出来なくとも、孫の顔を見るだけでもうれしいモノだ。いや、本当は孫の顔を見ることが目的なのかもしれない。  松原の妻はすでに亡くなっている。彼が定年を間近に控えた頃に、病気で亡くなったのだ。妻とはよく、退職をしたら温泉旅行でもしようと話したものだったが、ついぞ、旅行の一つをすることも叶わなかった。
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