翻弄せよ変人

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それから何やら落ち込んでしまった霜月にどうしたのか尋ねても「いや、気にしなくて良い」と返されてしまう。 友人の悩みなら打ち明けてくれたら僕なりに解決策を編み出そうとは思うけれど、霜月本人が良いと言うならこれ以上は差し出がましいかな。 次第に他のクラスメイトたちが登校しているのかざわつく教室内で、すっかり読書する気がなくなった僕は携帯を操作する。 ケンちゃんに今日の放課後、転校生くんと沢渡くんと会いに玲司が付いていくことになったことを伝えねば。 玲司に何かあった場合、僕では力及ばずでもケンちゃんならば必ず助けてくれるように。 転校生くんは予測困難だからねぇ、また玲司に危害を加えないとも限らない。 昼休み。 食堂に向かおうと廊下に出れば、何だろう、騒がしい。 階段で人垣が出来ているではないか! 何か面白いことでもあったのかな、と野次馬根性を燻られ辺りを見渡せば、近くにオレンジ色の艶やかな髪が見え、こっそり忍び寄れば気付いたのか権蔵は振り返りにっこり笑みを向けてくれた。 「うふふ、後ろから近付いて驚かそうとしても無駄よん」 「権蔵はケンちゃんや玲司に次ぐ気配察知に長けているねぇ」 「あらやだありがとっ。お昼まだでしょ、一緒に食べましょー」 「勿論さ。ところでこの人垣は一体何なのだろうか」 「あぁ、これ? ほら、転校生ちゃんの親衛隊が居たでしょ? その子たちが何だか揉めてるみたいで、どーしようかなぁって考えてたとこ!」 「揉め事かい? 何も昼時の中央階段でやらずとも良いだろうにねぇ」 本当よねぇ、と相槌打つ権蔵は疲れた様子でため息付くと、近くに待機していたのか他の風紀委員が寄って来た。 「副委員長、ここは俺たちにお任せください」 「あら、でも」 「犬養さんとご予定がありましょう。そんな副委員長に仕事をさせてしまえば、俺たちが委員長に潰されかねないので」 「なら、権蔵の代わりにケンちゃん呼んであげよう。仕事だよーってねぇ」 「いえ、犬養さん! これくらい諸星副委員長と祇園委員長が居なくとも俺たちにお任せください!」 ケンちゃんを呼ぼうとした僕を3人がかりで止める風紀委員の人たちを見た権蔵は、「そうねぇ」と頷く。 「じゃあ今回は任せたわん、何かあったら連絡ちょうだい」 「はい!」 「お任せください!」 「ごゆっくり!!」 3人に見送られ、「行きましょ」と権蔵に肩を抱かれ違う階段へと向かった。
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