17水茶屋姉妹の四・夫婦

6/6
前へ
/97ページ
次へ
 数日後。婚礼の日。  店にはお苗と辰六と平次。  閑古鳥とはいかずとも空席。いるのはしんみりした暇人だけ。 「お葉さんが結婚、お凛ちゃんも平次のものになって、お苗ちゃんまで男ができてか。続くもんだねこういうのは」 「きっと白無垢も綺麗なんだろうな」  それを笑顔で語れるものだけの会合。 「読み書きできても団子は別だな」 「文扱ってりゃ身につくが、不器用さは生まれもってのもんだ。鳶にもむいてねえらしい。あと書けても字は汚ねえぞ」  辰六と平次と山盛りの団子が出てきた。 「金を取るほどのもんでもないな。まあ、そんな店はいくらでもあるが」  どこぞの爺様たちの評価。辰六はまだ顔を覚えていない。 「なにが違うんですかい?」 「違いがわかる男にならねえと。団子も月日でどうにかなるさ」 「でもなんだろうな。悪くねえ。なんか安心するんだよ。甚五郎のはできすぎだ」  首をひねる辰六。 「なにもそこまでなれとはあいつも言わねえさ」 「だいたい飛脚がなぜ団子をこねる?」 「お苗が好きだからだ」  照れ隠しで振り向きざまにそう言うと、そこにお苗。 「ほわー!」  両手で頬を押さえる。転がるお盆。お苗の声が響いた。 歩んで生きる だから未来へ 宝輝き 嫁ぎ行く
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加