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数日後。婚礼の日。
店にはお苗と辰六と平次。
閑古鳥とはいかずとも空席。いるのはしんみりした暇人だけ。
「お葉さんが結婚、お凛ちゃんも平次のものになって、お苗ちゃんまで男ができてか。続くもんだねこういうのは」
「きっと白無垢も綺麗なんだろうな」
それを笑顔で語れるものだけの会合。
「読み書きできても団子は別だな」
「文扱ってりゃ身につくが、不器用さは生まれもってのもんだ。鳶にもむいてねえらしい。あと書けても字は汚ねえぞ」
辰六と平次と山盛りの団子が出てきた。
「金を取るほどのもんでもないな。まあ、そんな店はいくらでもあるが」
どこぞの爺様たちの評価。辰六はまだ顔を覚えていない。
「なにが違うんですかい?」
「違いがわかる男にならねえと。団子も月日でどうにかなるさ」
「でもなんだろうな。悪くねえ。なんか安心するんだよ。甚五郎のはできすぎだ」
首をひねる辰六。
「なにもそこまでなれとはあいつも言わねえさ」
「だいたい飛脚がなぜ団子をこねる?」
「お苗が好きだからだ」
照れ隠しで振り向きざまにそう言うと、そこにお苗。
「ほわー!」
両手で頬を押さえる。転がるお盆。お苗の声が響いた。
歩んで生きる だから未来へ
宝輝き 嫁ぎ行く
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