119人が本棚に入れています
本棚に追加
うららかな光と風。ゆれる草花。
梅の花。月光に淡く輝き、日光に香る。
若いよもぎの群生を横切る黒猫。
「にょわ?」
目のくりくりした少女。追いかける。
「こら、お蜜!川に近づいちゃだめって言ったでしょ!」
もう少し大きな少女が走ってきた。捕まえる。
「お花!お蜜!どこまで行ったんだ!店を開けるぞ!」
息が切れる。髪も白くなった甚五郎。
さっと店の前に出てくる少女姉妹。
「今日もまかせときな!」
「にゃ!」
お花、十。真似するお蜜、六つ。
「足ばっかり早くなりやがって。よっこいせ」
縁台を出す。
翼屋の幟。お花は一度それを持って街道で仁王立ち。それから杭に縛り付ける。
橋の袂。
街道を挟んで向こう側には大きな店が二つ。
「あんた!また帳簿が一文間違ってるよ!」
「え!ごめんよ!」
「尻に敷かれてるな佐吉」
「お義兄さんこそどうなんです」
「おいらは座布団と相性がいいんでい」
お静は飛脚屋の風屋が来ると、すぐに話を通して近場の通販を始めた。
刻限を守る信用性から、武家にまで扱われるようになる。
さらにその傍ら、得田屋の帳簿まで監査していた。
最初のコメントを投稿しよう!