18水茶屋姉妹の五・お花とお蜜

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 不意にお花の頭にも手が。そこにお凛。 「じゃあ、二人で一人前になるようがんばりな」 「おっ母さん!」  忍び足。襟首を掴まれる平蔵。 「金も無いのに邪魔するんじゃないよ」  拳骨一つ。  こっそり席を立って逃げようとする影。  そこにも拳骨一つ。席にはたくさん平らげた串の数。 「多少の金があっても余裕はないはずなんだけどね。いつからいたんだい?」  捕まった平次。 「ちょっと先に来てただけだって」 「本当にいつからいたんだ?」  自分の親父に気付いていなかった平蔵。  縁台に座るお凛。向からお静。 「ああ、肩が凝る」 「お静が一番老けたな。早く子を作りな」 「いや、それがね……」  意味ありげな沈黙。 「できたの?」 「うん」 「おめでとう!祝いだ!」  盛り上がる翼屋。 「よし!あんた!無事に生まれるまで店手伝ってやんな!帰ってこなくていいよ!」 「おいおい」 「平蔵!変わりにうちの仕事しな!」 「やだ」 「たった十月十日。それぐらい務まらないとお花ちゃんを嫁になんてできないよ!」 「なんだよそれ!」  慌てる平蔵。
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