18水茶屋姉妹の五・お花とお蜜

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 急に賑わう翼屋をよそに。  お蜜はなぜか街道の前に出る。  旅の一座か。見たこともない赤い着物の女の子が集団の後ろを歩く。  街道の果て。遠くまでその美しい赤が映えた。  母によく似ていると言う。幼い自分でもそれは分かる気がする。  母が見つめているものはいつも面白い。  いつかこの街道の先から運命がやってくるだろうか。  振り返る。橋の上。  ちょっと不思議な生き物に見える。だが、すぐにそれとわかる。 「おかえりなさい!」 「ただいま」  沸き立つ翼屋の前に来ると、みんな一様に格好に驚く。 「どうしたってんだ」  背負われているお苗。顔を真っ赤にして半べそ。 「転んじゃった」  あきれるもの笑うもの。 「おっ母さんはこれだから」  どちらにしろ、お苗らしい。  背から降りて縁台に座る。 「ほれ、あんたも座りな。お腹大事にしないとね」  お静を座らせる。 「え?お静ちゃん?」 「うん」  満面の笑み。 「よかったね。おめでとう!」  足の痛みも忘れて立ち上がる。 「あた!」  転びそうになると辰六が受ける。そしてまた座らせる。 「慣れたもんだね」 「こんなんばっかだからな。お静ちゃん、しばらくお苗と離れてた方がいいかもよ」 「そうかも……」  落ち込むお苗。 「そんなことないよ。お苗さんみたいに幸せそうな子が欲しい」  目を潤ませながらお静の手を握るお苗。何度も頷く。
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