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「やれやれ、江戸はどうだった?」
「本当に華やか。お葉姉さんは相変わらず。まったく変わらないの」
「噂の息子は?」
「得多屋の周りは若い女だらけ。役者より整った面してやがんの」
辰六もまいったと首を振る。
平蔵はちらりとお花を見る。
「役者みたいな顔か。私自身はそうなりたいけど、そんな男はやだなあ」
みんな笑う。
ほっとする平蔵。
「でもなんでもできるぜ。優しく厳しく、人望がある」
「へえ。さすが私の従兄弟だ」
まるで自分のおかげのように言う。
またみんな笑う。
お蜜がお苗の裾を引っ張る。
「どうしたの?」
お苗はお蜜を抱き上げて膝の上に座らせる。
しかし、お蜜はお苗が襷掛けに背負っていた荷物を気にした。
「これ?」
中から引っ張り出すと、お茶の葉。
「お葉姉さんにもらったんだけど。飲むの?」
お蜜はそれを裏に持っていった。
「なんだこりゃ。茎ばっかりで安いの持ってきたな」
すぐに聞こえてきた甚五郎の声。
そんなことを言うが、あまりに出来すぎて驚いている。
小さな湯呑茶碗がたくさんお盆の上に乗っている。
ふらふらするお蜜を助けに行くお花。
「あら」
「まあ」
「おや」
誰もが一声。すべてに茶柱。
姉妹は縁起を配る。
見つめるお苗。お茶の子二人。
「両の縁あって良縁になる。お茶の縁だけに濃い。千之助さんがそんなこと言ってたな」
「いい恋でよかった」
「そうだな」
姉妹が持ってきた茶を幸せな笑顔で受け取る。
映る笑顔に縁起のいい柱が一つ。
どうかまた末永く笑顔でいられますように。
しまいを語り のち願わくば
恋茶のこのこ 永久再々
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