そして迎えた使い魔契約の日

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 だから、当然の結果として、技のキレは自体は少年の方が上だ。しかし、いざ実戦となれば、少女の方が圧倒的に少年をうわまわってしまう。霊術の才能がある、ということだけで。  昔はそのことで苦しんだものだ。だれよりも自分を追い込んで強くなろうともがく双子の兄ではなく、自分にテリア家において歴代最強とまで謳われている父すらも上回るであろう才能が、戦いがあまり好きでない自分にあるのだろう、と。  今ではそんな感情は微塵もない。少女の胸の内にあるのは、ただ、兄に対する恨みだけだった。  父からの期待。周囲から寄せられる期待。それらは幼いころの少女にとっては重圧でしなかった。そんな精神が擦り切れる生活を、ただひたすらに耐えてきた彼女は、いつしか暗いものに支配されていき、そのすべてが兄に向った結果である。  彼女はぎりっ、と歯ぎしりし、じっと兄の動きを見つめていた――  ☆ ☆ ☆   いよいよ、なのだ。ぼくの今後の人生を大きく左右する使い魔召喚の儀式は。昨日は、自分の部屋の荷物を、一応まとめてからは、どうにも眠れず、今までの習慣から鍛錬を始めてそのまま夜を明かしてしまった。  そのため、今さら眠さが襲ってきており、さっきからあくびが絶えない。自分の人生が決まる大事な日とは思えないくらいの気の抜けっぷりだと思う。
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