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堪え切れぬ頭痛を感じ、閉じめていた目を開ける。どうやらいつのまにか寝ていたらしい。上体をけだるげに起こし、焦点の定まらぬ瞳で周囲を見渡す。あたり一面は、荒れ果てた荒野に変わり果てていた。
ぼんやりとしたまま、彼女はそれを眺め、顔をしかめる。頭痛がひどくなったのである。決して、昨日まではきれいな花が咲き乱れていたここの惨状に心を痛めたわけではない。
こめかみを手で押さえ、彼女は立ち上がる。とりあえず水が飲みたい。この頭痛はあれだ、二日酔に違いない。
「むきゅう」
と、足元から可愛らしい声が聞こえてきた。足元に目をやる。そこには、一角獣の幼体がいた。一角獣といえば聞こえはいいものの、その実、彼女の一族――いや、種族では最弱だった。そのつぶらな瞳に彼女は苛立ちを覚える。軟弱者が彼女は嫌いだった。
ふん、と鼻を鳴らし、足を動かす。まだ酔いが抜けきっていなかったのか、足元はふらついており、危ない足取りであった。さっさと家に帰って水を飲まないと。
「やっぱ、アマテラスと呑み比べなんてするのではなかった……くそ、あののんだくれめ……」
と、背後から「きゅい!?」と声が上がり、この世界ではない力が働くのが分かった。戦闘狂の気がある彼女は、吐き気を堪えつつ後ろを振り向き、落胆する。
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