54人が本棚に入れています
本棚に追加
悲劇――のち、喜劇として語られるようになるが――はそこでは終わらない。次に彼女を襲ったのは陣だった。
もともとはさっき彼女がふんづけ、今は「ふきゅううう」と震えている一角獣が他世界へと導くはずのものであったのだが、今その陣に触れているのは彼女であり、発動途中であった陣は今まさに発動したわけであり、その結果、彼女が陣に引きこまれた。
「しまっ……!」
その状況のまずさに、一気に彼女の頭は覚醒した。しかし、覚醒したところでどうにもならないことを彼女は知っていた。3000年前くらいに、彼女よりも強いアマテラスが抵抗してもあっけなく他世界へと引きずり込まれて大爆笑したのは良い思い出だ。
しかし、この状況は笑えない。すごく笑えない。ばれたら死ぬ。恥ずか死ねる。
いったいどこの世界に千鳥足で歩いていたらものに躓いて、それで転ばないようにあがいたのに、一角獣をふんづけて転んだ挙句、もともとはふんづけた一角獣を呼び出すために生まれた陣に引きづり込まれる馬鹿なんているのだろうか。いるわけがないと思っていた。
そんなありえない目に遭っている自分はなんだ? 真正の馬鹿か? 本当にすごく笑えない。誰か夢だと言ってください……。
最初のコメントを投稿しよう!