不安と恐怖とそれと、

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つい最近にすばるくんが髪を切った。長い髪が大好きやった俺にすばるくんは何一つ言わずに。 せやのに恋人の俺に会うても髪については何も言わんし、背中までのびてた艶めかしい黒髪は今じゃ結ぶこともできひんくらい短くなってた。 横山くんに言われたから? すばるくんは短い方が似合うってそう横山くんに言われたから切ったん? これまでにもすばるくんは長くしたり短くしたりを繰り返してきた。やけど俺とすばるくんが付き合うたのは最近のこと。 俺のすばるくんになったからこそ、頭にしつこく浮かぶのは横山くんやった。 「亮…今日あいとる…?」 「明日ロケやから。」 イライラしてせっかく話しかけてくれたすばるくんに冷たくしてまう… 「…そっか……ぁ、…で、でもな?…ちょっと……だけ……でええんやけど……飲むわけやないから…………」 不機嫌な俺を察したのか若干吃りながら言われる。 ほんまはこんな態度取りたくないのに、頭ではわかっとるのに、口や身体はうまく動いてくれへん。 「少しならええですけど?」 「…ん、…ならどないしよ……」 「今日合鍵持ってるやろ。せやったら8時に待ってるから。ほな俺これから撮影」 「…………が、…がんばって…な……」 俺のあほ。大好きな人恐がらせてどうすんねん…… 後ろから小さく聞こえるすばるくんのエールではっとして何度も後悔した。 8時に、すばるくんが来たら謝ろう。そんで俺が気になることも全部ぜんぶすっきりさせよう……… そう頷いて俺は大倉との撮影に足を運んだ。 ×
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