見つけてくれて、ありがとう

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藍原 華色さんからお話を頂きました。 ………………………………… 大学に入って仲良くなった友人は俺の昔を知らない。 「あっ、これ。小学校の時のアルバム?」 初めて俺の部屋に来た友人は、物珍しそうに棚を物色する。 「俺んとこのアルバムは、タイトルにデッカく『夢』って書いてあったなぁ。」 友人は、昔の思い出を語りながら、棚から取り出した少し大きめのその本をパラパラと捲り始めた。 小学生の頃の俺は、内気でなかなか人前に出ない子だった。 アルバムに写っているのは、クラス写真と全員の集合写真。 それ以外は、子どもの頃の人気者が幅をきかせていた。 あんまり、写ってないよ、俺が言おうとした時、友人がアッと声をあげた。 「これ、お前だろ?」 一枚の写真を指してはしゃぐ。 驚いて、俺はそれを覗き込んだ。 運動会の一枚。 赤白帽を被って横一列に並んで立つ後ろ姿。 一人だけ、ウルトラマンが居た。 よくよく目を凝らすと、帽子の端に名前が見えた。 「ほら、やっぱりお前だよ。」 友人が何時になくはしゃいでいる。 俺だって、今の今まで気が付かなかったのに。 「お前、昔から変わってねぇのな。」 友人は何故だか笑い転げている。 「そうゆう、しれっと面白い事するとこ。」 「へ?」 俺は意味が分からず、腹を抱えている友人を見つめた。 お前の方が面白いし…と思ったが口には出さないでおいた。 何だか嬉しい。新しい発見だ。 「見つけてくれてありがとう。」 俺はそう言って、笑い転げる友人に右手を差し出した。 握り返してくれるかな? おわり。 …………………………………
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