シンシア・フィッシャーの定義

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「西条、お前は本当にスゴイな!俺の自慢の生徒だよ。 この調子で明日の全国模試も頼むぞ!」 「・・・・・。」 ・・・心底どうでもいい。 答えがあんな分かりやすく明示された茶番を一生懸命解いたところで、私の人生に何がプラスされるんだろう。 第一、アンタみたいな能天気そうな押しつけがましい馬鹿教師が、私はヘドが出るくらい嫌いだ。 そんなことを考えながら、無言で日向野から答案を受け取ると、一瞬日向野は眉毛をピクリと動かした。 だけど口元の笑みだけは絶やさないまま、次の答案の生徒の名前を呼んだ。 私は知ってる。 私が嫌いなように、日向野も愛想のない私のことが嫌いなことを。 でも、私がこの学校で“IQ180の天才少女”と褒めそやされているから、おおやけに私のことを粗野に扱えないんだろう。 ・・・馬鹿みたい。 やっぱり、こんな平凡な公立高校なんかに来るんじゃなかった。 この世は無常。 人生は一度きり。 だけど退屈で愚鈍な時間は、 水のように手の間から滑り落ちていく。 タン。タン。タン。タン。 退屈な午前の授業を終えた私は、いつものように屋上へと繋がる階段を上る。
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