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自転車を漕ぎながら捻くれていると、隣りから声がした。 「その一人もいないくせに」 「わっ」 突然、声を掛けられた私は自転車を漕ぐのがよろめき、驚きの声が出た。 「葵ー、おはよう」 驚かした本人は平然としている。このマイペースな子は、 「美希、おはよう」 そう、佐藤美希である。 幼馴染みでもある。 二人並んで学校への道を自転車で進む。 「もうー。びっくりしたんだから」 私が片手で胸を押さえる仕草をする。 「ごめんごめん」 美希は素直に謝った。 「大丈夫だよ。考え事してて、突然だったからびっくりした」 「よかった」 と安心したと同時に、 「そうだ!」と何か思い出したかように声を上げる。 「今年は同じクラスになれるといいね」 今日から私達は2年生。 1年の時は二人違うクラスだった。 私達の高校は毎年クラス替えがある。 「今年は祐也くんと同じクラスになれるといいねー」 祐也くんとは、美希が好きな男の子。 今度は私からのさっきのお返しとばかりに美希を茶化す。
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