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先生の説明も気がついたら終わっていて、私は彰くんと一緒に中三の教室に戻った。
既に下校時刻を10分ぐらい過ぎているから教室は真っ暗だし、誰もいない。
ってことは……残ってる中三は二人だけ、ってことか。
考えると同時に、私は赤面した。
私、なに期待してるんだろ……。
余りの偶然さに、ちょっぴり調子に乗ってるのかな。
「莉乃ちゃん、帰る?」
声に振り替えると、三組のドアのところで彰くんが待っていてくれていた。
私は小さく頷いた。
一瞬、いつも騒いでいる子たちの顔を思い浮かべたけど、慌てて消す。
「莉乃ちゃんの家はどっち?」
「こっち……」
「じゃ、俺と一緒だ」
正門を潜ると、すぐに居心地の悪い静寂が訪れた。
なにか喋ろうと思えば思うほど、言葉はつっかえて出てきてはくれない。
よく、沈黙が平気なのが本当の友達だとか言うけれど。
沈黙が平気な相手なんて、美香と優香里と風間ぐらいだと改めて気がつく。
どうすればいいかわからなくて、ふと私は空を仰いだ。
一面に広がる青い空。
点在している白い雲。
────あぁ、夏がくるんだ。
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