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「ただいまー」
「お帰りなさい」
キッチンから、肉の焼ける音と共にお母さんの声が聞こえる。
匂い的に、今日の晩御飯はしょうが焼きってとこかな?
「今日、疲れたー。先生に押し付けられて整備委員長なんかなっちゃったんだよ」
鞄を下ろしながら、今日の出来事を端的に述べる。
お母さんは相変わらず、あらあら御愁傷様と微笑んだ。
なんつーかリアクションが薄い人なのは昔からだから気にしないことにする。
「そんなことより、お前、勉強してんのかよ?一応受験生だろ?」
後ろから、お兄ちゃんに頭を小突かれた。
受験生っていっても、地元の高校受けるし、そんな大げさじゃなくてプチ受験生って感じだ。
「大丈夫だって!私はやればできる子ですから」
「よくいうよ。母さんも父さんも放任だからって勉強しないでいると痛い目に遭うぞ」
私ははいはい、と適当に相づちを打った。
取り敢えず言っただけの、その場しのぎにすぎない言葉だ。
「莉乃、これ運んでー」
タイミング良くお母さんに言われて私はそそくさと立ち上がる。
私の予想通りのしょうが焼きが、良い匂いを漂わせていた。
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