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「天城、莉乃……ねぇ」
今夜も"儀式"を終えて、俺はゆっくりと立ち上がった。
静かで陰惨な夜には、俺の小さな言葉ですら響く。
真夜中の教会に忍び込んで神に祈りを捧げるだけだが、俺の中ではとても重要な儀式だ。
……別にキリスト教を信じているわけではない。
毎日ではないが、仕事のない日はほぼいつも来ている。
ふと、唯一儀式を邪魔された夜が脳裏をよぎる。
まさか、あんな非力そうで小さな来客者に邪魔されるなんて思ってもみなかった。
だからか、なかなかそいつの顔が頭から出ていってくれない。
やけに胸の奥の方がモヤモヤするのは……きっと気のせいだ。
「……めんどくせ」
大きな欠伸をすると、考えることを止め、俺はふらりと教会の外に出た。
ここは、割りと交通量の少ない道路のお陰で、完璧に闇に溶け込むことができる。
……独りきりで過ごす夜ほど長いものはない。
特にこんな、濃厚で深い夜はそうなんだ。
永遠に等しい時間を生きる自分の孤独さを一層身に染みて感じる。
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