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「しかし、日本の梅雨ってのは暑いな……」
不謹慎だが、教会の屋根に座り込んで、ふと呟いてみる。
俺がイギリスから日本に来たのは……何年だ?多分、……百年ぐらい前。
あんまり覚えてないけど、確かあっちは割りと涼しかったような気がする。
それに、日本にいるのは「ヒト」ばかりだ。
ここにいるヒト以外のものは大抵、永い時を生きすぎた動物たちが化け物になったものたち。
俺と同族はいない。
つまり……吸血鬼、と呼ばれるものは日本には生息していない。
めっきり少なくなった吸血鬼は世界中でも希少な存在。
特に俺みたいな"純血種"と呼ばれるのはごく僅かしかいないんだ。
「しかし、腹減ったな……」
もう血を飲まない、と決めたのもやっぱり百年ぐらい前。
日本に来て。
人間たちに怖れられるのがとても怖かった。
"バケモノ"って敬遠されてしまうのが。
今まで仲良くしていた人たちから畏怖の眼差しで見られてしまうことが。
嫌でも自分とヒトとの隔たりを強く認識させられるのが……
とても、怖かった。
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