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"ヒトの生き血を啜るバケモノ"
"おとぎ話の中だけの、非現実的な化け物"
ほとんどの人間の吸血鬼への認識は、だいたいこんな感じだ。
まぁ、あながち間違ってはいないし、それどころかほぼ正しい。
理性を失ってしまった一部の吸血鬼なんかは、闇雲に人間から血を吸って殺めることもある。
歴史に名前を刻んでいる恥ずべき吸血鬼たちはほとんどそうだ。
だけど、俺は純血種。
理性は勿論あるし、普通の吸血鬼に比べて身体能力もかなり高い。
だから特に危害を加えるようなことはないのに……
人間は、吸血鬼の内面なんて全く知りもしないで敬遠する。
人間なんてものは、いつの時代も弱いものだから仕方ないけど。
でも、時代は進み……
今では、吸血鬼なんてものはおとぎ話の中だけにいる空想の化け物ってことになっている。
「ねぇっ、十夜さんっ!!」
……はい?
闇夜に紛れて、完璧に姿を消していた筈なのに。
どこかで聞いたような声が、真下から俺の名前を呼んでいる。
漆黒の闇の中から不意に聞こえてきたその声は、確実に俺を動揺させていた。
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