5人が本棚に入れています
本棚に追加
くだらない会話をしながら
川沿いを歩く。
…──街並みが、紅に染まっている。
「暑かったな、今日も。」
「…まぁ、梅雨前だしな。」
部活帰りなのだから
余計に、だろう。
「キレイだよな、空って。」
──ん?……なんか、コイツ。
柔らかい笑顔と共に。
「めんどかったよな、今日の数学。」
「お前……」
何?って
首を傾げる山本。
「喋り方、きめぇ...」
「気づいたか、やっぱ。」
ドカッ!!
いつもと違う話し方。
なんだか
気持ち悪いような
恥ずかしいような。
変な気持ちになって
左足のふくらはぎの辺りを
蹴ってやった。
「痛ぇんだってッ、足。」
それでも
その話し方をやめる気はないらしい。
「筋肉痛なんだよな、多分。」
──…へぇ。コイツにも“筋肉痛”とかあんのか。
「マジうぜぇ…」
「そっか?」
「なんか、じれったいっつーか...」
「“とーちほう”って言うんだぜ、これ。」
──そんぐれぇ知ってるっつの。
「つか、“倒置法”な。」
今日の最後の授業…
確か
国語の時間に。
先公が言っていた気がする。
「どっか行こうぜ、今度。」
「…ん。」
小さく、短い応え。
「なぁ、獄寺」
隣に俺がいるくせに、
俺に話しかけているくせに。
まっすぐ前を見て。
だから
返事をするかわりに
山本の横顔を覗いた。
1つ大きく、深呼吸。
息を吐くのと同時に
山本の表情が和らいだ。
「なぁ、獄寺」
「だからなんだよ。」
「好きなんだ、お前が。」
──────…
“倒置法”なんて。
そんなの…
──反則だ。
-end-
→
最初のコメントを投稿しよう!