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「そうなんだよ、それで迷ってる」
近辺の略式地図を指さす。
「いま計画しているのは、ここの駅前なんだ。土地が狭くて、ホテルのほうが部屋数を確保しやすい。が、駅から離れたここの広い土地も捨て難くてね」
君ならどうする?という顔を向けられ、正悟は視線を資料に落としたまま即答した。
「僕なら後者ですね。駅前はうるさすぎて落ち着かないし、後者なら広々とした旅館で静かに休息が取れる。タクシーの無料券でも配布すれば、車がない人も利用できますし。それにここの土地柄は……」
そこまで言って、ハッと言葉を止めた。
チラリと父のほうに目を向けると、父が代わりに言葉を続けた。
「ここは観光というより癒しを求めてくる客が多い。だから後者のほうがこの土地柄には合う、かな?」
「……素人の考えです。利益を追及するなら前者かもしれません」
目をそらして答えた。
この流れはヤバイ……そう思い、身構える。
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