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あの桜並木のプロポーズから、3ヶ月の月日が流れていた。
「あ、正悟! 見て見て、これ可愛いよ」
「じゃーそれにする?」
「ん~~。保留」
未歩が首をひねると、ショーケースの向こう側から女性店員のクスクス笑う声が聞こえた。
その店員の持つケースには、『保留』された指輪たちがズラッと並んでいる。
「どうしよう、どれも可愛くて全部欲しくなっちゃう」
「……何回 婚約する気なのかな?」
その優柔不断っぷりに正悟が呆れ顔で笑った。
そんな2人の姿に、また店員が笑う。
今日こそエンゲージリングを決めるつもりで来たが、彼女の様子だとまた買わずに終わりそうだ。
もう入店して2時間以上経つというのに、宝石店の女性店員はとても優しい笑顔で未歩の『決定』を待っている。
その笑顔が逆に怖い……と思い、正悟は苦笑いを浮かべた。
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