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夏だ。
陽射しが強く、じりじりと肌を焼く。
未歩と明美が大学の講義を終えて中庭へ行くと、そこはちょうど日影になっていて生徒たちのくつろぐ姿が目に入った。
残念ながら、空いているベンチはない。
しかたがないので、足を放り投げて芝生へ座る。
「ねっころがりたーい」
隣の明美が座ったまま伸びをした。
クスクス笑いながら空を仰ぐと、飛行機雲が境界線を描いていた。
「それで、結局指輪は買わなかったんだ?」
「うん、最後まで営業スマイルを崩さない店員さんが怖かったよ」
「あはは。正悟さんも災難だねぇ、毎回空振りの買い物に付き合わされて。イライラされなーい?」
「されないよぉ」
昨日の幸せなデートを思い出し、ひとりニヤけてしまう。
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