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昔の話、“江戸の狐、四国の狸”と言われるように狐は当時、強大な勢力を誇っていた。それゆえ、“二つ名”を持った豪傑狐たちも少なくなかった。
なかでも“於莵羅狐”(オトラギツネ)は実力、貫禄ともに、他の狐と一線を引いており、その名は広く知れわたっていた。
しかしこの於莵羅狐、何ともイタズラ好きで、変幻しては人を驚かしたり、それだけならまだ可愛いものの、得意の狐火で一山まるごと灰塵にするなどやりたい放題の始末。それ故に“狂火の於莵羅”と恐れられるようになった。
挙句には憑いた人とその家族、家畜までも喰ってしまったりと、ついに堪えきれなくなった人々は於莵羅狐の討ち手を募った。
勇敢な者が集まり、於莵羅狐に挑んだのだが、皆、歯が立たず喰われてしまった。
途方に暮れていた人々の前に、於莵羅の話を聞きつけてきた、独りの修験者が現れた。
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