ラプンツェル

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しばらく歩いていくと なにか聞こえてくる なにか…… 「歌声…?」 かすかだが、聞こえてくる方へ進む まるで、誰かを呼んでいるような 切ない声 だんだんはっきりとしてくる声 「あれは…」 その声とともに見えてくる高い高い塔 その一番上には… 「女……?」 長い髪を手に絡ませながら女は 歌っていた ―――――――――――― 「ラプンツェル」 外を眺めながら歌うあたしを呼ぶ声が背後から聞こえ 振り返る 「ばっちゃん!」 「夕食の準備はしておいたからね」 「うん…もう、行っちゃう…?」 「すまないね…仕事が忙しくてながい出来ないんだ…」 「そっか…」 いつもと同じ ばっちゃんはあたしの食事や衣服を用意して すぐに帰ってしまう 勿論、それは毎日じゃない 1日一緒にいてくれる日だってあるの 「ウィンリィ、わかってるね いつも通り、誰も入れるんじゃないよ」 「うん、わかってる」 「それじゃあね」 笑顔で手を振って、見送るあたし キィ…と扉が閉まり、鍵をしめる鈍い音が部屋に響く 体をくるりと回転させ 窓の方へ歩いていく 真っ青な空を見上げて、あたしはいつもの言葉を呟く 「あたしは…なんのためにここにいるの…?」
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